ホスト夫の“アフター”は浮気? 枕営業の真実と慰謝料請求の可能性
ホストクラブで働く夫が、お客さまと「アフター」に行ったり「枕営業」をしている疑いがある場合、配偶者としては不安になるものです。仕事だから仕方ないと割り切れるのか、それとも浮気として見なされるのか…。この記事では、ホストのアフターや枕営業が法的にどう位置付けられるのか、そして慰謝料請求が可能かどうかを解説するとともに、関連する裁判例にも触れていきます。
ホストのアフター・枕営業とは
1-1.アフターの意味
ホストクラブの営業終了後に、お客さまと飲食やカラオケなどに行く行為を指します。売上・指名を伸ばすための“サービス”の一環とも言われますが、プライベートに近い密接なコミュニケーションが行われることも多く、配偶者側からすると「浮気では?」と疑念を抱きがちなポイントです。
1-2.枕営業の実態
ホスト(またはホステス)が、身体の関係を持つことで売上や指名を得ようとする行為を一般的に「枕営業」と呼びます。すべてのホストが行っているわけではないものの、一部では実際に性行為を伴うケースも報告されており、問題視されています。
浮気にあたる? 法的に見る不貞行為のポイント
2-1.不貞行為(浮気)の定義
日本の法律において、不倫や浮気に該当するかどうかは「配偶者以外の異性と肉体関係があるか」が大きな判断基準となります。一般的には、感情の有無や「仕事だから」という理由は関係なく、性行為が行われていれば不貞行為と認定される可能性が高いです。
2-2.営業目的でもアウトの可能性
「ホストとして仕方なく、営業活動として枕営業をした」といった主張があったとしても、実際に身体の関係が確認され、恋愛感情があるようなやり取りがあれば、浮気とみなされることは十分にあり得ます。
ホステス側への慰謝料請求が認められなかった裁判例について
3-1.東京地裁判決(平成26年4月14日)の概要
実は、ホステスが関わる不貞行為について、慰謝料請求が認められなかった裁判例があります(東京地裁判決 平成26年4月14日)。このケースでは、ホステスの側に「夫が既婚者であることを知らなかった可能性」や「そもそも夫婦関係破綻への影響が限定的だった」といった事情が考慮され、ホステスへの慰謝料請求が認められなかったとされています。
3-2.仕事だから必ず免責されるわけではない
この判決は「相手女性(ホステス)に慰謝料を認めなかった」という結果であり、「ホステスだから常に免責される」という一般論ではありません。
- 不貞行為を行った夫の立場であっても、「相手が既婚者であることを知らなかった」または「夫婦関係に与える影響が軽微だった」など特別な事情が考慮された場合、相手女性への請求が認められない可能性があります。
- 一方で、相手女性が夫の既婚性を知っていたにもかかわらず、不貞行為に積極的に加担していたような場合には、慰謝料が認められる可能性が高まります。
3-3.ホストの場合も同様の判断基準
ホストの枕営業においても、「相手女性がお金を払う客だから仕事上の行為だった」という点だけでは不貞行為を免れる理由になりません。ただし、相手がホストの既婚性を認識していなかったり、そもそも深い関係ではなかったなどの事情があれば、裁判で慰謝料が認められない例もあり得るという点は同様です。
枕営業が浮気と認定された場合の慰謝料請求
4-1.夫に対しては基本的に請求可能
配偶者である夫が不貞行為を行った場合、精神的苦痛に対する損害賠償(慰謝料)を請求することができます。枕営業などの名目であっても、実際に肉体関係が証明されれば浮気として扱われる可能性が高く、立証できれば慰謝料を請求する道は開かれます。
4-2.相手女性への請求は証拠次第
ホストの顧客である相手女性に対しても慰謝料請求をする場合、「既婚者であることを知っていたかどうか」や「不貞行為への積極的な関与」が大きな焦点になります。前述の裁判例でも分かるように、ただ肉体関係があれば慰謝料請求が常に認められるわけではなく、個別の事情と証拠の有無が重要です。
まとめ:事例により結果が異なる。まずは冷静な情報収集を
ホストの枕営業は「仕事上の行為」という印象があるかもしれませんが、浮気や不貞行為が立証されれば、夫に対してはもちろん、場合によっては相手女性にも慰謝料請求が認められる可能性があります。
ただし、実際の裁判では個別の事情が考慮されるため、「必ず請求できる」とも「必ず認められない」とも言い切れません。東京地裁判決(平成26年4月14日)のように、状況次第では相手側への慰謝料が認められない事例もあるため、まずは冷静に事実関係を整理することが大切です。